表情が豊かで社会性に富んでいる/entry84

おはようございます。
第84回目は entry83 の続きです。


チンパンジー( Chimpanzee )
分 類/霊長目
科 名/ショウジョウ科
属 名チンパンジー
学 名/Pan troglodytes

 チンパンジーは、ザイール川の北の、中央アフリカから西アフリカにかけての20ヶ国以上の国々で、森林地帯や森の多いサバンナに生息していて、その範囲は、セネガルから東はウガンダまで広がっています。
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生息域/熱帯林、熱帯雨林、草原とサバンナを含む開けた生息環境
生息状況絶滅寸前種
行動単位/群れ
体 長/70~90㎝
体 重/30~60㎏
性成熟年数/7~8年。ただし、13歳頃までは子を産まない
繁殖時期/通年
妊娠期間/約8カ月
1回の出産数/1頭。ときに双子
繁殖期間/4~5年
主な食べ物/果実、種子、葉、樹皮、昆虫、ハチミツ。ときにサル、レイヨウ、野生のブタ
寿 命/35~40年

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大きな耳。社会性に富むチンパンジーは、森の中を響きわたってくる、群れのメンバーが発する鳴き声を聞き分けます。
前を向いた両目、色を識別できるすぐれた視覚能力。このお陰でチンパンジーは、距離を正確に判断し、熟した果実を見つけ出すことができます。
ぱっちりした目と、毛で被われていない顔。とても表情豊かで、群れの他のメンバーに向かい実に様々な感情と反応を表します。
しなやかな唇チンパンジーはしなやかな唇を使い、歯を見せて笑います。しかし、本当のところは恐怖の感情をあらわしているのです。歯は人間のと似ていますが大きめです。特別に分化していない歯並びは、このサルが雑食性であることを示しています。
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長い腕は、木から木へぶらさがって移動できるほど力が強いです。しかし、普通は両手の指を拳のように折り曲げて、4本足で歩きます。
利口で機知に富んだ猿人類チンパンジーは機転がきいて学習能力がある上に、目と手の協調、そして体力もあります。これらが一体となって、森の生活に上手く適応しています。


チンパンジーの仲間達
チンパンジーは6種の大型類人猿の1種です。他には、中央アフリカの2種のゴリラ(gorilla)、東南アジアの2種のオランウータン(orang-utan)、そしてザイールのボノボチンパンジー(bonobo chimpan-zee)がいます。

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オランウータン


神話? それとも実話?
 チンパンジーが、他の類人猿と同じく菜食だというのは正しくありません。チンパンジーの食べ物の5~10%は、鳥の卵であり、昆虫や肉類です。事実、チンパンジーの間で共食いがあったという報告がいくつもあります。



データは2005年頃のものです。



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 チンパンジーが歯を見せて笑っているように見えていたのは、本当は恐怖の感情をあらわしていたのですね。
   sakuya ☯️



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キャッキャッとおしゃべり/entry83

おはようございます。
第83回目は野性動物の御紹介です。


チンパンジー 陸生哺乳類
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 さまざまな声で会話する
   かしこい森の住人

 チンパンジーは、器用で、発明の能力もあり、高度な社会性も持ち合わせています。知能が高く、手先が器用なので、簡単な道具を使って食べ物を手にすることができます。また興味深いことに、チンパンジーの群れの一つ一つが、道具の使い方や毛づくろいの仕方を独自に発展させてきました。それは、その群れがアフリカのどこから来たかによって異なります。チンパンジーは大きな家族グループで生活し、互いに強い絆を結び、そして、この絆は生涯続きます。チンパンジーはといえば「 かわいいっ! 」というイメージがありますが、実際はとても力が強いです。ときには気を荒立てることもあり、他のチンパンジーに襲いかかったり、殺してしまうことさえあります。

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チンパンジーは人間に最も近い種で、遺伝子の98%が一致します。


🌍 赤ちゃんを乗せて
 生まれたばかりのチンパンジーは、まったく無力です。そのため、最初の数ヵ月は母親から乳をもらわなくてはなりません。母親が3~4年間も、子供を抱っこしていることもあります。また、我々人間と同じように、チンパンジーの子供には長い幼児期があり、遊んだり、木登りをしたりして多くの時間を過ごします。そして子供達は、母親や群れの仲間をそっくり真似ながら、集団の中でどう振る舞ったらいいか、どうしたら生き残れるかを学習していきます。

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チンパンジーの母親と赤ちゃんの絆はとても強く、もしどちらかが死ぬと、生き残ったほうは深くなげき悲しみます。


🌍 チンパンジーの社会
 チンパンジーの群れは10~80頭まで、規模に幅があります。普通、ボス格のオスが群れを率いています。群れには複雑な社会階級がありますが、これはメンバーの出入りの度に頻繁に変わります。群れの中のランクは性格や知能だけでなく、どれだけ体力があるかによって決まります。
 チンパンジーは騒々しくてよく仲間と連絡を取り合い、キャッキャッ、と “ おしゃべり ” をし、怒りもあらわします。そして手を叩き、互いにキスをすることもあります。また、高度な社会性をもち、互いに毛づくろいを楽しみ、怒ると金切り声をあげて両手で地面を叩いたりケンカを仕掛け合ったりしますが、普通はすぐに仲直りします。夜は、大人達がそれぞれ木の上にねぐらを用意します。枝を葉っぱごと折り曲げた、快適な寝床です。


🌍 かしこいやり手
 チンパンジーは主に菜食であり、1日のうち最大4時間は食べ物探しに費やします。とりわけ果実を好みますが、柔らかな若芽から樹皮にいたるまで、植物のどんな部分でも食べようとします。彼らは、自分の食べたいものが手に入りそうになると、持ち前の知能を発揮し、石を使って木の実を割るチンパンジーや、小枝を使ってシロアリやアリを巣から釣り出すものもいます。また、狩りをすることもあります。チームを組んでサルやレイヨウの子や野生のブタなどを、捕まえて乱暴に引き裂きます。

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このチンパンジーは、岩の欠片を使って、ヤシの実のかたい殻を慎重に割っています。


🌍 絶滅の危機にさらされて
 チンパンジーの生息数が今のペースで減っていくとしたら、20年後には絶滅してしまうと思われます。主な問題は、伐採・開墾・開拓により生息地が失われることです。
多数のチンパンジーが、現地の人々の食用として殺されるか、ペット業界やサーカス業界向けに捕獲されています。いろんな国で国立公園が作られ、チンパンジーの狩猟を禁止する法律が可決されていますが、密猟は後をたちません。2001年5月、国連が大型類人猿保護プロジェクトを立ち上げ、世界をあげて、チンパンジー及び大型のサルの保護戦略を展開しています。

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オリに入れられた動物園のチンパンジーには、どんな未来が待っているのでしょうか。


データは2005年頃のものです。



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チンパンジーは果実だけ食べていると思ってたのですが、狩りもするみたいなので、攻撃的な一面があるんですね。
仲間とおしゃべりをするところは人間と似てて、可愛いです。
   sakuya ⚛️




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~見つからないで~ 宝島より/entry82

おはようございます。
第82回目は文学の御紹介です。

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少年少女世界の名作文学7 】
  イギリス編

 宝 島( entry77 の続き )
 著 者/スチーブンソン氏
 訳 者/近藤 健( けん )


 ( 四 )“ 船長 ” の衣類箱

 その “ 船長 ” の手の側に、片面を黒く塗った小さな紙切れが落ちていた。あの “ 黒まる ” だった。片面には、はっきりした字で『 今夜の十時までだぞ 』と書いてあった。
「 十時までだとすると・・・・・ 」
 僕がつぶやくと、母が時計の方にろうそくをかざした。ちょうど六時だった。
「 まだ時間はあるけど・・・・。まず、あの箱のかぎを見つけないと。きっと体に付けているだろうが、こんな飲んだくれの死体にさわるなんて・・・・・ 」
母はべそをかいた。
その母に代わって、僕は死体のポケットを次々探してみた。が、ナイフと紙たばこなどばかりで、かんじんの鍵は出てこない。
「 ひょっとすると首にかけているかも・・・・」
また母がいった。僕は気味悪かったが、冷たい死体の胸をはだけて探ってみた。と、なるほど、汚れたひもにつないで首からぶら下げていた。
それをナイフで切り取って二人は二階へ急いだ。
長い間 “ 船長 ” の寝ていた部屋はすっかり陰気臭くなっていた。でも衣類箱はいつもの所にあった。
「 どれ、早く鍵を! 」
そして母は、何度かひねり回してふたを開けた。
開けたとたんたばこの匂いがぷーんとした。が、1番上にはきちんとたたんだ上等の服がひとそろいあった。続いてその下から幾本かのたばこ、立派なピストルが2丁、銀の棒、古いスペイン製の時計、そして、あまり値打ちのない身の回りの物が幾つも出てきた。が、その中に、西インドの海の珍しい貝殻が幾つか入っていたのは、ならず者の “ 船長 ” の箱だけになんだか不思議な気がした。
さて、その下には古びた船乗りの作業服が1着ーーー母はせっかちにそれを払いのけた。と、もう箱の中の最後の物ーーー油紙にくるんだ書類のような物と、触るとざくざく金の音のするズックの袋だった。
「 やっぱり金はあったよ! だがね ジム、あの海賊どもだって人間だろう。私が正直な女だということを見せてやらないと! 」
「 えっ? 」
「 私のもらい分だけはきちんともらうけど、その他はびた一文だって取らないことにするよ。さあ、さっきのクロスリーのおかみさんの袋・・・その口を開けて持っていておくれ! 」
やがて母は船長の金袋からこっちの袋へ、一つ一つ数えながら入れ始めた。しかし、これはなかなか時間のかかることだった。だいいちその金は色々の国の物が混ざっていて、より分けるのが大変だった。
 もらい分の半分ほど数えた時だった。僕はびくっと思わず母の手を押えた。外の方からあのめくらの杖の音がコツコツと聞こえてきたからだ。
母もぞっと体を硬くした。杖の音はだんだん近づいて来て、やがて入り口のドアをガタガタと鳴らし始めた。ドアには鍵をかけてきたもののもし壊されでもしたら・・・と思うと生きた気もしない。僕達は息を殺し、体を硬くしているしかなかった。
ドアの音はしばらく続いたが、どうしても開かないと分かってあきらめたのか音は止んだ。それからまた、コツコツと杖の音が聞こえ始めた。
帰っていくのだ、とはっきり分かって二人はやっと長い息を吐いた。
「 さ お母さん、この金をみんな持って早く逃げよう! 」
僕がせき立てると母は、今度は意外と落ち着いた声で、
「 ね ジム、私はね、余計なお金は一文も取らない代わりに、一文でも少なかったら承知できないんだよ! 」
また数え始めた。
僕はそんな母に腹が立ってきた。自分だって心の中ではきっと震えているに違いない。そのくせつまらない意地を張っているのだ。
「 ね お母さん! 」
しかし母は止めない。僕の気持ちはいよいよいら立ってくる。
と、まだまだ全部を数えきれないうちに遠くの方で口笛が鳴った。きっと仲間達への合図だろう。
今度はさすがの母も慌てだした。
「 ジム、数えた分だけ持って逃げようか? 」
「 だからいってるじゃないか。さ 早く! ーーーよし、足りない分の代わりにこれを持っていこう! 」
「 それは? 」
「 なんだか分からないけど、大事そうな物だからね! 」
僕は油紙にくるんだ小さな包みを持った。
それからの二人はまた夢中だった。ろうそくを箱の側へ残したまま手探りで下へ降り、入り口の鍵を開けるが早いか走った。
 霧はだいぶ晴れてきていた。月ももうかなり高く登って、両側の高地を照らしていた。だが幸いにも、家の周りは低い場所だからまだ月の光も受けないし、薄い霧も残っていた。
「 今のうちに出来るだけ遠くまで! 」
二人は走ったーーーといっても走るのは僕の気持ちだけで、母の方はまるで歩いているみたいなのろさだ。それでいて、はあはあと苦しがっている。
 やっと半分程の所まで来たが、そこからは月の光の中へ出なければならなかった。
いや、おまけに人の足音と揺れながら近づいてくる明かりも、二つ三つ見えた。
「 ああ、もう・・・・・ 」
とうとう母はうめき声をあげて倒れそうになった。
「 お母さん! しっかりしてよ! 」
僕が慌てて体をかかえると
「 ジム、私はもうだめだよ。私にかまわず、この金の袋を持って逃げておくれ! 」と、もたれかかって気を失いかけている。さっきはあんなに欲張りだったのに今になってこうも気の弱くなった母が、僕は恨めしかった。
「 しっかりしてよお母さん! ーーーーー それじゃしばらくどっかへ隠れよう! 」
まったくそうするしかなかった。
 僕達は小さな橋の側に来ていた。僕はよろける母を助けて、ともかく土手の下まで降りた。だが、橋の下は低くて一人だけがやっとだ。それでまず、母をそこへ隠そうと思ったが、ぐったりしている体は重くて動かすことが出来ない。
僕はもう運を天にまかせた。ほとんど丸見えの母の体に自分の体を被せて、そのままじっとしているしかなかった。



* 原本より漢字表記を多めに使用しています。



訳者
近藤 健( けん )
大正2年秋田県に生まれる、日本児童文芸家協会会員。
主な著書に『 はだかっこ、一本道 』等がある。


発 行/昭和40年9月20日
編 者/©️ 名作選定委員会
発行所/株式会社 小学館

先導者であり教師である/entry81

おはようございます。

第81回目は生物の御紹介です。


ハイイロオオカミ
  
( entry80の続き )

分 類/食肉目
科 名/イヌ科
属 名/イヌ属
学 名/Canis lupus

 ハイイロオオカミは、北米アラスカからグリーンランドにかけての広大な森林やツンドラ地帯に生息します。また、東ヨーロッパ、スカンジナビア、西ヨーロッパの人里はなれた山岳地帯、インド、アジア、中東にも見られます。
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生息域
・森林地帯を含む針葉樹林
・森林地帯を含む温帯林
・山岳地帯、高地、がれ場の斜面
・草原、沼沢地、ヒース地、低木林、原野などを含む開けた生息環境
ツンドラ地帯を含む極地
生息状況/地域により絶滅種・危急種
行動単位/群れ
体 長/1~1.5 m
尾 長/30~51 ㎝
肩 高/66~96 ㎝
体 重/16~60 ㎏
性成熟年数/メス1年、オス2年
繁殖時期/1~4月
妊娠期間/60~63日
1回の出産数/5~6頭
繁殖間隔/1年
主な食べ物/主に大型の草食哺乳類、小型の哺乳類も
寿 命/最長13年


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聴覚は、人間の20倍もするどいです。
長い鼻づらは、人間の100倍も鼻が聞きます。
・がっしりした力強い体とスタミナのおかげで、ハイイロオオカミはすぐれたハンターでいられます。厚い被毛は、寒い北国のきびしい天候を生き抜くのに役立ちます。
力強く長い脚は、速く走ることができます。


ハイイロオオカミの仲間達
 ハイイロオオカミはイヌ科のなかで最も体が大きいです。アメリカアカオオカミ( red wolf )は別種か、ハイイロオオカミコヨーテ( coyoteの交配種と考えられます。アビシニアジャッカル( Ethiopian wolf )はアフリカに生息しています。イエイヌはオオカミの子孫と考えられています。


神話? それとも実話?
 狼男の伝説は、フランスの “ ルーガルー ” のように、あちこちにあります。ローマの伝説に出てくるオオカミは、うんとおとなしく、ローマ建国の祖、双子のロムルスとレムスはオオカミの乳で育てられたとされています。アメリカ先住民の社会では、オオカミは先導者であり、教師であると考えられています。

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オオカミの乳を飲むロムルスとレムスのブロンズ像


データは2005年頃のものです。



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 普通の犬よりも嗅覚と聴覚は鋭いのですよね。
   sakuya ☯️




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警戒心が強いが高い知能をもっている/entry80

おはようございます。

第80回目は生物の御紹介です。


ハイイロオオカミ 陸生哺乳類
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きびしい階級社会に生きる
  優秀なハンター
 かつて世界で最も広い範囲に分布する肉食動物だったハイイロオオカミは、何世紀にもわたって人間から恐れられ、迫害されてきました。しかし、警戒心がつよく高い知能をもつこの動物は、おとぎ話や過剰報道のおかげで、ひどい誤解を受けてきました。今では、北半球の荒野や人里はなれた山岳地帯に少数が生き残っているにすぎません。野生のイヌ科動物のなかでも最も大きいハイイロオオカミは、群れで行動する動物であり、8~20頭くらいの家族の群れで生活します。群れは協力し合って、シカのような大きな動物を狩ります。
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ハイイロオオカミはなわばりを見回りながら、24時間で200kmも移動することができる。


階級社会 🌎
 オオカミの群れは、「 アルファ・ペア 」と呼ばれる、最も強いオスとメスをリーダーとする厳格な階級社会をもちます。オオカミの行動のしかたは、それぞれの社会的地位によって決まります。群れのリーダーは脚を伸ばして立ち、耳や尾はピンと立て、歯はむき出しています。一方、より地位の低いものは尾や耳を下げて、身を低くしています。群れは食物を十分まかなえるだけの狩りのなわばりを守り、その境界には尿で匂いのマーキングをし、ライバル関係にある群れが近づかないよう警告します。群れのメンバーは吠え声をあげて連絡を取り合います。仲間が声を合わせて群れ全体の吠え声をできるだけ大きく、力強くし、他のオオカミを威圧しようとすることもあります。

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信じがたいことですが、オオカミの吠え声は10㎞も離れたところでも聞こえます。


とても有能なハンター 🌎
 オオカミの群れは、協力して狩りをすることで、1頭ではとても太刀打ちできないような大きな獲物を倒すことができます。オオカミは、とても優秀なハンターです。というのは、耳がとてもよく聞こえ、鼻もよくきき、速く走れるからです。かれらは獲物を追いつめると、ふつう、つけ回して、弱いものや病気のものに狙いを定めてから襲いかかって殺します。最初に獲物を食べるのは、きまって群れのリーダーです。オオカミは単独で、ウサギのような小動物を狩ることも多いです。また、腐肉も食べます。

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オオカミは一度に9㎏もの肉を食べることもあります。ふつう、毛皮や骨も余さず食べます。


巣穴の母親 🌎
 群れのリーダーたちだけが、交尾をし、子供をもつことができます。メスは春に地下の巣穴に入り、5~6頭の子供を産みます。約4週間後、子供たちは巣穴の外に姿をあらわし、両親や群れの他のメンバーが吐きもどした食べ物を与えられます。群れのメンバーは、リーダーの子供たちの世話もします。3~5か月もすると、子供たちは群れといっしょに走れるくらい力がつき、狩りのしかたを学びます。

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オオカミの巣穴は、子供を産み、育てる間だけのすみかです。子供は耳も聞こえず、目も見えない状態で生まれてきます。


オオカミの復活 🌎
 ハイイロオオカミは、かつては多くの国で無制限に捕獲することが許されていました。かれらが家畜を殺すこともあったからです。多くの地域でハイイロオオカミが絶滅してしまったのはこのためです。しかし、オオカミの再移入と保護が東ヨーロッパやアメリカ合衆国の何か所かで成功を収めています。ハイイロオオカミは合衆国西武ではもはや危機的状態にはなく、東ヨーロッパのカルパチア山脈ではオオカミの調査計画が進められています。



データは2005年頃のものです。



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 ハイイロオオカミは厳格な階級社会の中で暮らしてるのですね。地位の高いものはいいですけど、低いものは尾や耳を下げ身を低くして暮らすなんて、嫌ですね。
   sakuya ☯️




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お島さんの実家 ~あらくれ~ /entry79

おはようございます
第79回目は日本文学の御紹介です。

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日本文学全集8
  徳田秋声
 著 者/徳田 秋声氏

あらくれ
 
 十三
  ( entry78の続き )

 盆か正月でなければ、めったに泊まったことのない生みの親たちの家へ来て二三日たつと、じきに養母が迎いに来た。
 お島が盆暮に生家を訪ねる時には、砂糖袋か鮭を堤( たずさ )えて作がきっとお伴をするのであったが、この二三年商売の方を助( す )けなどするために、時には金のしまってある押入や用箪笥の鍵を委( まか )されるようになってからは、不断は仲のわるい姉や、母親の感化から、これもともすると自分に一種の軽侮( けいぶ / 1を持っている妹に、半衿( はんえり / 2や下駄や、いろいろの物を買っていって、お辞儀をされるのを矜( ほこ )りとした。姉や妹に限らず、養家へ出入りする人にも、お島はぱっぱっと金や品物をくれてやるのが、気持ちがよかった。貧しい作男の哀願に、堅く財布の口を締めている養父も、傍へお島に来られて喙( くち )を容( い )れられると、因業( いんごう / 3を言い張ってばかりもいられなかった。遊女屋から馬をひいてくる職工などに、お島は自分の考えで時々金を出してくれた。それらの人は、途( みち )でお島に逢うと、心から叮嚀( ていねい )にお辞儀をした。
 おおかたの屋敷まわりを兄に委( まか )せかけてあった実家の父親は、兄が遊蕩( ゆうとう / 4を始めてから、また自分で稼業に出ることにしていたので、お島はそうして帰ってきていてもめったに父親と顔を合わさなかった。毎日毎日箸の上げ下ろし5に出る母親の毒々しい当てこすりが、お島の頭脳をくさくささせた。「 そう毎日毎日働いてくれても、お前のものといっては何にもありゃしないよ 」
 母親は、外へ出て広い庭の草を取ったり、父親が古くから持っていて手放すのを惜しんでいる植木に水をくれたりして、まめに働いているお島の姿をみると、家のなかから言い聞かせた。広い門のうちから、垣根に囲われた山がかりの庭には、松や梅の古木の植わった大きな鉢が、いくつとなく置き駢( なら )べられてあった。庭の外には、幾十( いくそ / 7株松を育ててある土地があったり、雑多の庭木を植えつけてある場所があったりした。この界隈に散らばっているそれらの地面が、近ごろ兄弟たちの財産として、それぞれ分割されたということはお島も聞いていた。
 いつか父親が、自分の隠居所にするつもりで、安く手に入れた材木を使って建てさせた屋敷も、それらの土地の一つのうちにあった。
「 ええ。ちっとばかりの地面や木なんぞ貰ったって、何になるもんですか。水島の物にだって目をくれてやしませんよ 」お島は跣足( はだし )で、井戸から如露( じょろ / 8に水を汲みこみながら言った。
「 いい気前だ。その根性骨( こんじょうぼね / 9だから人様に憎がられるのだよ 」
「 憎むのは阿母さんばかりです。私はこれまでに人に憎がられた覚えなんかありゃしませんよ 」
「 そうかい、そう思っていれば間違いはない。他人のなかに揉まれて、ちっとは直ったかと思っていれば、だんだんいけなくなるばかりだ 」
「 よけいなお世話です。自分が育てもしないくせに 」お島は如露を提( さ )げて、さっさと奥の方へ入っていった。


1.軽侮( けいぶ )/人をばかにして見下げることです。
2.半衿( はんえり )長襦袢に縫い付ける別衿で汚れから守るものですが、顔に一番近い場所になる為、コーディネートのポイントにもなります。
3.因業( いんごう )/頑固で無情なことです。
4.遊蕩( ゆうとう )/しまりなく、遊びにふけることです。
5.箸の上げ下ろし/こまやかな事にまで口やかましく言う場合に用いる語です。
6.当てこする/他の事にかこつけながら、それとなくわかるように、相手に悪口や皮肉を言うことです。
7.幾十( いくそ )/たくさんの量があることです。
8.如露( じょろ )/草花・植木等、庭の散水に用いる道具の一種。如雨露( じょうろ )とも書きます。
9.根性骨( こんじょうぼね )/根性を強めていう語です。



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 お島さんと母親は年月を経ても仲が悪いですが、負けじと言い返すところがお島さんらしいです。
  Sakuya ☯️




日本文学全集8 徳田秋声
著 者/徳田秋声
発 行/昭和42年11月12日
発行所/株式会社 集英社
©️ 1967